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さて、熱海駅前のレストラン「フルヤ」を出たあとは、土産物屋が建ち並ぶアーケードへ・・・
いかにも温泉地・・・といった感じのケバケバしい色の看板や文字が並んで、これぞ熱海!?っていう好ましい雰囲気なのですが、いささかショックなコトも・・・

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実はこの古色蒼然とした佇まいのアーケード入り口に位置する蕎麦屋「成木屋本店」は、今回の旅でも特に行きたかった店で帰りに寄ろうと思っていたんですが、暖簾はかかっておらず、なんと『本日休み』だって・・・

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一応事前に調べたところ、不定休となっていたので気にしてもしょうがないのですが・・・

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二階部分の欄干や外見上の数々の伝統的な意匠を間近で眺めるにつけ、思わず
あ~あ・・・
ってな感じになってしまいます。
ホントはここでビール飲んで帰るはずだったんだけどなァ~

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結論から言うと、ここを始め興味のあった店や施設で休みのところが昨日は結構多かったような気がしました。熱海の火曜日は避けるべし!?
こりゃあ近いうちにもう一度来なきゃダメだよなァ・・・

というのも、熱海駅が無粋なテナントビルになってしまったように、この界隈・・・
これからは古いモノが取り壊されて、
なんだかどんどん開発されていくような気がするんですョ・・・
そんな大袈裟じゃなくても店舗を新装するとか。
ずーっと寂れた状態だったこの街も、旅館やホテルが低価格路線にシフトしたおかげでやっと賑わいを取り戻していますしね。

DISCOVER JAPAN じゃなくて、
『 DISCOVER OLD JAPAN 』を旅のテーマとする僕としては、これは重要なモンダイ?だったりするのです・・・

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さて、気をとりなおして駅近くの " OLD JAPAN " を探索です。

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干物、廃業した怪しげな店や旅館跡・・・

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この巨大な廃墟は、元はボーリング場だったのか・・・

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・・・って感じで徘徊していると眼の前にタクシーが走ってきたので迷わず手を挙げて乗り込むことに。


その目的地は、
海にほど近い昭和町にある「起雲閣」でした。

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道路に面して立派な長屋門を持つこの「起雲閣」は、1919年(大正8年)に政財界で活躍し、海運王と呼ばれた内田信也によって伝統的な日本建築である主屋部分が別荘として建てられ、その後は鉄道王と呼ばれた実業家である根津嘉一郎の手に渡ったのちの昭和初期に庭園部分が整備され、また素晴らしい洋館が追加されました。

今回の熱海旅行の一番の目的地・・・

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で、この「起雲閣」・・・戦後の1947年(昭和22年)からは旅館として営業をおこない、太宰治、山本有三、志賀直哉、谷崎潤一郎、舟橋聖一・・・
名だたる文豪が逗留した宿としても名を馳せた高級旅館となりました。

残念ながら平成11年に旅館を廃業してからは熱海市が買い取り、入場料僅か510円!で優雅な熱海の別荘建築を楽しめるように・・・

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実はこの「起雲閣」、僕も昔から憧れていた宿だったので当時家族旅行での宿泊を検討したこともあったのですが、あまりにもお高くて・・・
たしか一人一泊4万円以上したんじゃなかったかなァ~
1990年代の半ばくらいで・・・
そうこうして躊躇しているうちに廃業しちゃったんですよネ・・・
ホント、後悔しちゃってます。
でもそれ以前の時代はもっと高かったんだって!!



さあ、今回の記事では、そんな「起雲閣」の大正時代に建てられた部分である和の空間をご紹介させていただくことにしましょう。

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まずは控えめな玄関口すぐの場所に位置する『麒麟の間』。
コバルトブルウの壁が鮮やかな、数寄屋造りのケレン味のない上品な空間です。
細かく砕いた鉱物を混ぜ込んだ壁材が醸し出す芸術性・・・
それは齢99歳を迎えるこの部屋を古臭くみせるどころか、逆に斬新な最先端の存在であるかのような錯覚を起こさせるほどなのでした。

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畳にしばし胡座をかき、床の間の美しさにココロ動かされたり、木製建具を通して眺めることのできる洋館や緑が眩しい庭園をしばし愛でたあとは、余計な装飾を廃し、やはりシンプルな美を貫いた感のある階段を登って二階部分へ。

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一階と似た意匠を持つこちらは『大鳳の間』。
鮮やかな色彩の『麒麟の間』に比して、見る角度や光の具合によっては紫色にも群青色にも見える深い紺色の壁が特徴です。

館内の案内役の方のお話では、
バブルの最盛期にはこの座敷で夜な夜な大宴会が催されていたこともあったんだとか・・・
全くもってうらやましいハナシですよねェ~

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ところでこの「起雲閣」にはもうひとつ和の空間が存在しているのですが、それが離れになっている日本家屋にある『孔雀の間』。

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こちらは紅色の色っぽい壁が素敵な空間・・・

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熱海の名建築、「起雲閣」の和の空間は、シンプルながらも遊び心溢れる色遣いをした気品ある造りでした。

台風の影響で気温が若干下がったとはいえ、そんな座敷で真夏の陽光が降り注ぐ外の景色を眺め、ちょっぴり冷たい畳の上で涼んで寛いでいるうちに、ふと、かつてこの場所にふらりと現れたであろう太宰治や谷崎潤一郎の在りし日の姿を夢想する・・・

実に、贅沢でかけがえのない時が流れていくのを感じることができました。

さて・・・
これに対するのは余りにもデコラティブで耽美的な洋の空間・・・
それはまた別の機会にご紹介させていただくことにしましょうか。。。