
寄居の鮎料理の名店 「京亭」を後にした僕は、いつものように”昭和な光景”を求めてメインストリートから外れた路地を巡ることにしました。直感に従って魅力的な建物や風景を探す・・・・一人旅の一番の醍醐味です。
で、”something”を感じて曲がってみた細い道には、トタンに覆われた元商店らしき建物に猫の姿・・・・・
しかし、思わず振り返ってみたときに目に入ってきた光景・・・・・
単に新緑の木々が茂っているだけと思われた奥に見つけたのが
『野原医院』と旧字体で記された廃墟と思しき建物でした。



周囲の樹木の明るさが、その存在をこんなにも目立たぬものにしてしまっているのでしょうか・・・・
よく眺めてみるとけっこう魅力的な和洋折衷の木造近代建築・・・・
昔の栄華を偲ばせるに足りる造りであることがよく分かります。


ちょっと興味が湧いてしまったので、建物の端にある今にも朽ち果てそうな階段を上ってみます。
もちろん、とても不安定・・・・・軋む音はなんだか建物の悲鳴のようにも・・・・



試しに窓を開けてみようともしてみたのですが・・・・もちろん施錠をされていました。
このあたりから、なんだか背筋が冷たくなって、ゾクゾクした気分・・・・
窓に映しだされた木々の影も・・・・なにかを訴えかけてきているような、メランコリックな気分にさせてくれます。
ここって、もしかして・・・・!?
建物の前に敷き詰められた、黄色く変色した芋虫のような落ち葉が、足元にまとわりつくような感覚・・・・


直前まで食事を楽しんだ「京亭」の素晴らしい建物が、長年多くの人々に愛され、慈しまれてきたからこそ光り輝いているとすれば、この打ち棄てられた野原医院の廃墟はその歴史の中でも不幸な影の部分を一身に背負ってかろうじてこの世に存在しているようにも思えます。
建築物の光と影・・・・そのあまりに対照的な佇まい・・・
しかし、
トヨタ2000GTの美しさに魅かれる以上に草むらで朽ちているオート三輪の姿に心動かされ、
素晴らしいBARで味わう極上のシングルモルトを好みながらもガード下の黄昏れた居酒屋で飲むレモンサワーにより旨さを感じる僕としては、
この 『野原医院跡』 の悲しげな姿・・・それはたまらなく愛おしい存在に思えてしまうのでした。。。。。
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